お客様の文庫革~あの頃は・・・~
銀座店の春原です。
本日は、お客様がお持ちのちょっと珍しい文庫革をご紹介したいと思います❗
まずは、今が時期の「あやめ」柄のがま口です。
こちらは、浅草店にご夫婦でお越しいただいたA様がお持ちの文庫革です。
昭和48年、今から45年程前(!)に 奥様がご主人とのご結婚が決まられた際に義理のお母様にいただいたそうで、「もったいなくて使えない」とずっとしまわれていたんだそうです。
状態が綺麗なのもさることながら、今の「あやめ」と比較すると、彩色に鮮やかな色が使われていてとっても華やかな雰囲気ですね。
そして、版も今のものとは違いまして、お花は5つ描かれています。(今のものは3つ。水辺に咲いている様 を表現している涼し気な仕上がりです)
▼今の「あやめ」商品ページ
https://www.oozeki-shop.com/product-group/173
そしてそして、形も今はお作りしていないものなので益々レア度が高い!
こちらが昔の「あやめ」の版です。
手彫りの金属製で、凹凸に抑揚がありますね。
こちら、裏返してみると彫りかけの図案が。。。
鳥らしきもののシルエットが見えます。
彩色職人の大関さんによると、昔は金属がとても貴重だったので「裏も使えたら。。。」と試しに彫ってみたとか。
こちらの柄は結局、別の金属できちんとした版にしたようですよ!
続きまして、T様の文庫革です。
文庫屋「大関」の柄をよくご存じの方は「おや?この柄は?」と思われるかもしれません。
こちらは、先日お客様が銀座店に修理のご相談でお持ち込みされた「木版蝶(もくばんちょう)」という柄のお財布です。
30年くらい前(!!)に、親戚の方からいただいたというお品物だそうです。
こちらが型押し用の版です。
木版蝶は、その名の通り「木製」の版で型押ししていたもので、現在は製作していない柄です。
年季が入った版ですね~。社長いわく、「今にも割れそうな状態」とのこと。
他にも工房で保管している木版があります。
彫刻専門の彫師さんによる手彫りならではの迫力、そして道具としての美しさを感じます。
今工房に残っている木版はほとんどが戦前のものだそうです。
当時、金属は簡単には手に入らない貴重なものでした。その時期を木製のもので乗り切っていた、とのこと。昔の方々の工夫と努力がこんなところからもうかがえますね。
話は戻りますが、今回、T様のご希望の修理は、「劣化してしまった内装をきれいにして使えるようにしたい」という内容でした。
工房の職人にお財布を届けて判断してもらったところ・・・残念なことにT様のご希望の修理はできないという結果になってしまいました。
その理由としては、製造してからかなりの年数が経ってしまっていること、当時の革が「タンニン鞣し」であったことに関係しています。
※「鞣し(なめし)」とは、 そのままにしておくと腐ったり硬くなってしまう動物の「皮」を、服や鞄に仕立てるための素材=「革」に変化させること。
※タンニン鞣しとは、鞣剤に植物由来の成分(タンニン)を使用しており、伸縮性が小さく、堅牢な仕上がりが特徴。
現在、文庫屋「大関」では文庫革に自社開発の「混合鞣し」の革を使用しているのですが、こちらの「木版蝶」のお財布を作っていた当時は、「タンニン鞣し」の革を使用していました。
タンニン鞣しの革は硬くて丈夫であるがゆえ、縫製後年数が経ってからステッチをほどいたときに、革の表皮がパリパリと剥がれてきてしまう危険があるそうです。
そのため、今回は「文庫革破損のおそれあり」、ということでそのままお返しすることになりました。
文庫屋「大関」におけるお修理については、下記ページを参考にしてください。
▼修理について
https://www.oozeki-shop.com/page/154
今回、貴重なお品物を見せていただき、又ブログへの掲載を許可してくださいましたA様、T様、本当にありがとうございました!
お客様の文庫革、まだまだ大募集中です。
自慢のお品を持って、涼みがてらお店に遊びにいらしてください☆お待ちしております。
<おまけ>
銀座店ウィンドウディスプレイには、昨日からヤマボウシとリョウブを飾っています。
初夏の爽やかな緑が銀座の街に映えます✨
▼【間もなく終了!】 お好きな柄でお作りします
https://www.oozeki-shop.com/product-list/205