彩色職人の上田です。気温33度でも「ちょっと涼しい! 」と思わせた酷暑が再来のなか、皆さま如何お過ごしでしょうか。
工房も連日写真のような室温の中、文庫革作成に勤しんでおりました。

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今日は、先日告知済み8月9日(木)に発売 になります篠原ともえさんデザインの「宇宙」の彩色と錆入れの様子をレポートしたいと思います。(少々長くてスクロールが大変ですが 、工房見学気分でしばしお付き合いください)。

篠原さんの元気なイメージそのままに、ポップな色・柄が特徴の「宇宙」

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(お声が掛かるのを待つ絵の具たち)

彩色も、べったり塗るだけなら「塗り絵」と何ら変わらなくなってしまうので、「動き」や「明るさ」を意識しながら筆を滑らせます。

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(猛暑の中、クールにスイスイと彩色中のYGさん)

金の他に、恒星の如く輝くアイスブルーを使用しているのもポイントです。
これらのキラキラ系絵の具は乾くのに時間を要し、且つ、2度塗りが必要だったりして手間もかかる分、華やかさやゴージャス感もひとしおです

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(余談ですが夜空の星、青白く輝くもののほうが、暖色のものより表面温度が高いのだそう)

さてさて。彩色後、革はいくつかの工程を経て「錆入れ」部屋に運ばれてきました。
これから「錆入れ」という工程で「錆」を入れていきます。(柄のアウトラインや地模様など、茶色に見える部分が「錆」です。)

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「錆入れ」は「真菰【まこも】」という植物の粉を用いて行います。
 ↓ こちらが「真菰」です。皮を剥いで使用しますが、カサの割に採れる粉は少量なのです

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(干からびた、小さ目のトウモロコシのようです)

まず初めに、革に漆を塗ります。単に塗るだけにあらず、仕上がりを左右するため経験と勘がモノを言う繊細な工程です(・・・と、申し訳ないのですがこの工程は企業秘密のため、詳細無しでご容赦くださいm(_ _)m)。

次に、革や漆の状態を勘案しながら、「錆」を入れていきます。
「錆」に使用する「真菰」は適度な温度と湿度で革に定着します。(この「適度」が実はとても難しく、職人泣かせでもあります)。

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(素早く、でもムラにならないよう丁寧に。熟練の技は趣味の合気道譲りか?S田さん)

最後に、錆入れした革の表面についた不要な「真菰」を払う「払い」の作業に入ります。
型押しがしてある溝には錆(「真菰」)をそのまま残し、白い平らな面に乗っている錆を取ってメリハリをつけるのです。革の状態を見極めつつ、一枚一枚丁寧に手で払っていきます。

錆の定着具合によっては(錆が)取れやすい場合があるため、その際は細心の注意を払って・・・。

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下記は「真菰」を払う前のもの。赤○の中が特に埋もれてしまっています。

払い前:
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キレイに払って、埋もれていたキラキラもはっきりしたのがお判り頂けますでしょうか↓↓。

払い後:
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新人の頃はなかなか上手に払えず、取ってはいけない部分の錆を取ってしまい、何度も泣きたくなったことがあります。
特に、太い線や広範囲に錆が入っている部分は取れやすいのです。手や指がカサついているだけでもひっかかって錆が取れてしまうため、特に冬場は手のケアが欠かせません。

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(「錆び入れ」部屋卒業間近の「宇宙」

「錆」は、「真菰」や漆、革、気候等の様々な条件によって濃淡に微妙な差が出ます。
また、職人が一枚一枚手作業で仕上げるため、風合いも異なってきます。いわば、
「全く同じものは2つと存在しない」という、印刷された革や大量生産品にはない味わいがあります。
職人の中でも、「錆」は薄目が好きとか、濃いほうが良いとか、それぞれ好みが分かれたりします。

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▼「宇宙柄」特設ページはこちら
http://www.oozeki-shop.com/product-list/166

お時間が許せば是非、店舗に足を運んで実物を手に取って、自分だけの文庫革を見つけて頂ければと思います。
その際、ほんのちょっとだけ「あんなふうにして作っているんだなぁ」と想いを馳せて頂けたなら、職人冥利に尽きます

最後に恒例の?!謎掛けにて失礼いたします。

手にとっていただいた「文庫屋大関」の文庫革とかけて
宇宙の流れ星ととく
そのココロは
「一期一会」です

▼7/25(水)-8/7(火)まで伊勢丹新宿店に出店中!

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