【彩色職人便り】彩色だけじゃない!職人の一日
彩色職人の上田です。もう9月ですね。年々、1年が経つのが早まっているように感じるのですが、その現象を「ジャネーの法則」 と呼ぶそうです。簡単に言うと「50歳の人間にとって1年の長さは人生の50分の1だが、5歳の人間にとっては5分の1に相当する。」ので、年を取るほど、1年が早く感じるのだそう。
本日は、彩色職人の一年ではなく、とある一日をお届けしたいと思います。
(工房の窓から煙るスカイツリーを望む)
ここにいらして下さっている皆さまは既にお気づきのことと思いますが、私達彩色職人は「”彩色”職人」といいつつ、「彩色」以外の(文庫革作成の)工程を多々担っています。
9:00~12:00 「仕上げ」作業に入ります。
「仕上げ」は文字通り文庫革の仕上げの作業で、前回お話させていただいた「錆入れ」の次の工程となります。空調のない場所で作業を行うため、夏場は室内が40度を超えることも
(本日は約36度・・・熱中症にならないよう日々暑さと戦っています)
まず、革にのっている余分な「真菰」をエアガンで吹き飛ばします。
次に、手で細部まで丁寧に払い、棚に並べて行きます。
キレイになった革にラッカーを吹き付け、革をコーティングします。
コーティングは薄すぎても厚すぎても良くないため、革や錆の状態、更には気候やエアガンの調子等も鑑みながら慎重に行います。
(かけるスピードや革との距離、ラッカーの粒子の状態なども勘案します)
ラッカーが乾いたら、ホコリや白地に錆が付着してないか一枚一枚確認し、付着物があれば丁寧に取り除きます。
ちなみに・・・梅雨時など湿度の高い時は、革が乾くのに時間を要してしまいます。一方で、冬など乾燥した時期は早く乾くもののホコリ等が付きやすく、取るのに手間がかかります。
(コットンや綿棒を駆使して、革の仕上げ中!)
最後に革を拭いて出来上がりです。
お疲れ様でした~!
12:00~13:00 待ちに待った!?ランチタイム。
お弁当の人、外に食べに出る人、食事もそこそこに彩色に勤しむ人、などなど・・・。
13:00~15:00 午後からは「検品」です。
縫製され、出来上がって来た商品を検品します。
拭き上げながら、ゴミが付着していないか、縫製に乱れや歪みがないか、色抜けを見落としていないか等をチェックします。
(本日は人気のぐるっとファスナーの長財布です)
花更紗にホコリ君がつきまとって付着しています(赤○の中)。
(おそらく、ラッカー時に付着したのでしょう)
カッターで優しくカリカリっとして、ホコリ君にはおいとまいただきました↓
こちらは、個人的に好きな柄日本橋。
拭きながら、古(いにしえ)へ想いを馳せ目を閉じて・・・(決して寝てサボってはいませんよ(笑))。文庫革をたっぷり使った長財布ならではの、一枚の日本画のような柄が迫力もあり味わい深いです。
それなりの年齢の方がお持ちになられたら、もちろん上品で素敵だと思うのですが、20代くらいの若い方のバッグから「日本橋」が出てきたら、「粋でカッコいい!」と思いますね 。
15:00~18:00 ラストスパート!一日の締めくくりは「彩色」です。
彩色は基本、よほど枚数が多くない限り、都度「1アイテム、1柄」をひとりが彩色します。(例えば、ぐるっとファスナーの「花菱」を上田が彩色、というように。)但し、彩色の状況に応じて、複数人で分担・協力して彩色することもあります。
このように、彩色も作業も職人同士の連携、協力が欠かせません。そのお陰か皆仲が良くチームワークも抜群です。今は、新柄の準備に向け一丸となって頑張って居りますので、楽しみに待っていてください。
**銀座店臨時休業のお知らせ**
9月26日(水)
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