文庫革づくりの”源”を訪ねて/本年もありがとうございました

文庫屋「大関」の久保です。
先日、文庫屋「大関」の商品づくりに使う牛革を製造してくださっている
姫路のタンナーさんを訪問・見学させていただく機会がありました。
※タンナー…動物の革を鞣(なめ)し革にする製革業者さんのこと
いつも文庫屋「大関」の工房に届けてもらっている牛革は、こちら↓

もともと牛の体を覆っていたとは思えないほど平らで、表面に美しい白の塗装が施された革。
文庫革づくりの”源”であるこの白い牛革がどのようにつくられているのか!?本日は見学レポートをお届けします📝
今年最後のブログ、いつもより長くなりますが、お時間のある時にのんびりお付き合いいただければ幸いです😊
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以前のホームページでのお知らせを覚えている方もいらっしゃるかと思いますが、
2023年に火災によって、このタンナーさんの建物のうち1つが全焼してしまったことがありました。

↑写真左側に、大きな鉄骨3階建ての建物があったそう。現在は更地に
現在は別の建物に作業場を移し、製造を続けていらっしゃいます。
①一次鞣し~染色
鞣しにはいくつもの工程がありますが、まずは毛などを取り除いた原皮にタンニンやクロームなどといった薬品を使い、防腐性や耐熱性などを与えていく「一次鞣し」から。
こちらはクローム鞣しを終えたての革。
クロームがもともと深い緑色の薬品なので、鞣した革は淡い青色に染まります。
この状態を「ウェットブルー」と呼ぶそうです。


このどっしり感、伝わるでしょうか…まだ厚みがあり、水分もたっぷり含んでいます。この革たちはこの後、傷・へこみなどを熟練職人の目で見極めながら、用途別に選別されていきます。
📝ち な み に …
黒毛和牛などの「お肉がおいしい牛」は、皮も(虫にとって)おいしいそうで、虫喰いが多いのだとか。
肉牛として高級でない牛の方が、革としては扱いやすいそう。なるほど意外でした…!
こちらは「たいこ」と呼ばれる、巨大な木製のドラム式タンク。ぐるぐると電動で回転します。

一次鞣しが終わった革を入れ、さらに柔らかくする「二次鞣し」の工程や、油を入れて革に油分を加えたり、塗料を入れて赤や青などに染色する工程に使用されています。

革と一緒に入れる油や塗料にもたくさんの種類が。
「たいこ」は大体8時間くらいは回し続ける(途中で止められない❗)そうで、職人さんたちは朝5時から作業を始め、14時くらいになってやっと昼食をとれるのだとか…と、とんでもない体力仕事😱
②乾燥
時間をかけて鞣された革は「干し場」へ。フォークリフトで次々と運ばれていきます。


ものすごく広い!体育館くらいはありそうでした
水分を含んでどっしり重い大きな革を、一枚一枚干すだけでもものすごく大変そう…!
こんなに大きな革ですが、干すときは自然乾燥がとっても大事とのこと。
温めたり人為的なことをすればするほど、硬くなったり割れたりして扱い辛くなるのだとか。
お天気にも左右される大変な工程です💦
③加工~仕上げ
このようにして下地を整えられた革は、それぞれの用途によってさらなる加工を施して、「個性」を出していきます。
工場内を歩いていると、多種多様な色や質感の革が目に入ります。

「ちょっと原始的な機械もあるんですよ😀」と見せてくださったのは、バッターと呼ばれる機械。
どうやって使うか、皆さま分かりますか??

まず、突き出した棒の先の金具に革を挟みます。そしてスイッチを入れると…


バタバタバタバタ!!
棒が高速で上下に動き、ものすごい音を立てて革が振り回され始めました😱‼️
このバッターは、たいこで鞣した革をさらに柔らかくしたい時に使うとのこと。
短い時間でとても柔らかくできるのが特徴で、主に衣類用の革に使っているそうです!
この工程は「バタ振り」というんですって!音のまんま・見たまんまですね😁
続いて、横に長--く伸びた機械が登場!
こちらは、革の表に塗料や色止めの薬剤を吹き付ける「塗装機」。

文庫革の面に使う白革なら白色のペースト、
お財布の中などに使う色革ならそれぞれの色を入れて吹き付けていきます。


文庫屋「大関」の工房で行っている「彩色」の工程では、革の上に筆で直接絵の具を乗せていきますが、
その絵の具を弾いてしまうことが極力ないように、この塗装工程で薬剤の配合の調整をしてくださっているということです。


様々な種類の薬剤が積まれていました
こちらは「アイロン」。
私たちが日常で使うアイロンとは全く違う見た目ですが、「熱と圧力で平らにする」という役割は同じです。

巨大なローラーの下に一枚ずつ革を通していき、革をフラットにしていきます。
このローラー、100℃くらいの温度があるそうで、素手だと一瞬しか触れないほどの熱さ!
こまめに布でローラーを掃除する作業も、熱気を間近に感じるので夏は特に大変そうです🥵

“生き物の革”だから当然個体差もあり、安定した品質での生産が難しいなかで、文庫革に適した白革にするために細かな要望や相談を聞いていただきながら、文庫屋「大関」専用の革を生産していただいています。
理想の色の革をつくるために塗料の割合を見極めながら配合したり、気候に左右される工程がある部分は、
文庫革づくりの「彩色」や「錆入れ」の工程とどこか近しいものを感じながらも…
すべての作業のスケールの大きさ、技術力の高さ・多様さ、そして社員の方々の温かいお人柄に、とても刺激を受けた訪問となりました。
タンナーさんでつくられた白い牛革は、文庫屋「大関」の工房でまたいくつもの工程を経て文庫革となり、さらに縫製職人さんの手でひとつひとつお財布などに仕立てられて、やっと皆さまのもとへ辿り着きます。
果てしない時間と人の手をかけてできていると思うと、皆さまのお手元にある文庫革アイテムにも、さらに特別な思い入れが生まれるのではないでしょうか😊

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今年も、たくさんのお客様・お取引先の皆さまに支えられて、文庫革をつくり続けることができました。
いつも文庫屋「大関」をご愛顧頂き、本当にありがとうございます。
お手に取っていただいた皆さまに笑顔になってもらえるような文庫革づくりを、これからも続けていきたいと思っております。
来年もまた一年、文庫屋「大関」をよろしくお願いいたします🌸
皆さま、どうぞ良いお年をお迎えください🎍

