【彩色職人便り】 塗って、塗って、塗って ∞ 塗り続けています!
皆様如何お過ごしでしょうか。彩色職人の上田です。
2019年が明けたと思ったら、あっという間にもうすぐ3月ですね。子供の頃母に、各月の最初の文字と重ねて
「1月は『行った』、2月は『逃げた』、3月は『去った』って言って、過ぎるのが早いのよ。」
と言われたのを思い出しました。
逃げる、2月と財布の福沢諭吉を惜しみつつ・・・本日は「彩色」についてお話したいと思います。
「彩色」に使用する基本の絵具はこの8色です。
8色だけなので、引き出しに入っているこれら↓の色は、既成品を使用しているのではなく、すべて職人の手で作り出しています。
(共用絵具のお皿たち。自分がよく塗る柄は、個人用の絵具皿を持っていることも。)
彩色の際は、塗る柄の「見本」を用意します。
「見本」を元に、色を作ったり、塗り方を合わせたりします。
(見本と色チップ。各柄、思ったより多くの色が使用されてると思いませんか!?)
絵具皿があっても、それをそのまま使用するのではなく、色の調整が必須です。例えば、絵具をシャバシャバ緩めで塗るのが好きな職人の場合、緩い絵具だと色が薄くなってしまうので、色味を濃い目に調色したり、塗り方でバランスをとります。逆に、濃い目の絵具が好きな職人の場合は、白を多めに混ぜたりして「見本」より濃くならないように工夫します。
手塗りでありながら、色にバラツキが出ないように注意を払っているポイントがもうひとつ・・・。
(赤は少量で色が出やすいため量に注意。青は塗った後に色味が強くなるので、完全に乾いた色を見てから調整。)
それは、調色の際、外が暗くなってくると色の見え方が違ってきてしまうため、 明るいうちに行っているということです。
ちなみに、色のレシピは基本ありません。新人の頃はこの調色にとても時間がかかってしまい、難しい色の場合(中間色やスモーキーな色など。)1色作るのに1時間位かかってしまったこともあります。今ではパッと見ただけで、何いろが何色使われているかほぼ解るようになりました(・・・たぶん )。
本日は「いちご」を塗っています。
調色しては試し塗りをして、こんなふうに色見本と色を合わせて行きます。
(注:画像の試し塗りは「いちご」以外のもの多数です。念のため・・・。)
いちご(食べる方の)が大好きなので 、塗るのは楽しいです。
気をつけている事は、葉っぱの色は濃い色の方がどうしても強くなってしまうので、薄い色の葉とのバランスに気をつけて塗っています。また、花芯の黄色は錆に埋もれやすい色なので、型より大きめに塗っています↓。
(実や葉のグラデーションになっている部分が「ぼかし」という技法で、「ぼかし」ていない部分は「ベタ」と呼んでいます。)
(黄色の花芯、失敗・ハミ出しに非ず。大き目が錆に負けずかわいい。)
ちなみに、「好きな柄」と、「”塗るのが”好きな柄」は必ずしも一致しないです。
例えば、「乱菊」は個人的に好きな柄なのですが、塗るのは・・・嫌いじゃないけど、好きではないかもしれません 。何故なら、手数が多く塗るのにとても時間を要してしまうからです。
(上段:乱菊<赤紫>、下段:乱菊<青紫>の「見本」。錆が入った「見本」も。これで仕上がりをイメージして塗ります。)
職人によっても、「ベタ塗りが好き」とか、「ぼかしの方が得意!」とか色々です。一見単純そうなベタ塗りもムラにならないほうがいいとか、少々ムラがあるほうが逆に味わいが出るとか、柄によっても異なります。また、「ぼかし」もひとつだけではなく、多種多様です。
これから暖かくなって来たら是非、お店に商品を見にいらして下さい 。その際、是非、「ぼかし」や「ベタ」塗りに注目してみて下さい!
今回も、なぞかけにてお別れです。
「彩色」とかけて
「人生<
span style="color: #339900;">」ととく
そのココロは
「彩色」も「人生」も色々ですが、それぞれ唯一無二です。
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