【彩色職人便り】 冬の工房レポート
皆様、こんにちは。
無謀にも忘年会シーズンに人間ドックの予定を入れてしまい、気分のみ少食(幻想)になっている彩色職人の上田です。
さてもう、「師走」も約一週間過ぎましたね。本日は、あの猛暑が懐かしいくらいすっかり冬モードとなった工房の様子をご紹介したいと思います 。
室内でも30度を超えていたのが嘘のよう・・・
実は、↑ 上記の画像の背景にもちらっと写っておりますように、工房内の窓は換気のため(絵の具に含まれているシンナーが揮発するので)一年中開け放たれています。
ですので真冬は、すぐそばの隅田川を渡る寒気がモロに吹き込み工房内は極寒。手がかじかんで、筆の運びが上手くいかないこともしばしばなのです 。
早くもカイロで手を温めつつ、新柄 『黄金のタピ』 を爆塗中のYGさん
↓ こんなふうに、ダウンやキルティングのオーバースカートなど、防寒のためのアイテムが必須。
そうはいいつつ、今年はまだまだ暖かいとの声が職人間でちらほら
工房内を見回してみると、コンタクトケースに金を入れて(乾かない、漏れない!と、いい事づくめなのだそう。)新柄の『金唐小花』 を彩色中のT樫さん。
金や赤金などの金彩は、乾くのに時間がかかるため通常最後に塗るのですが、(金彩の)彩色箇所が複数あるとその手間も倍増します。また、2度塗りが必要だったりと、そのきらびやかさの理由は、惜しみない手間にもあるのかもしれません。
最近席を移動したばかりのため、デスクがまだキレイ(笑)
実はこの『金唐小花』、今回リリースされた新柄の中で唯一、既存柄からのお色直しのためか今一歩目立てていないのかな・・・?と。
でも、大関春子師匠をはじめ職人の間では、「上品で良い柄。」「可愛くなり過ぎず、合わせやすいよね。」と、とても人気のある柄なのです!
個人的には、金彩を多用していることもあってかクリスマスっぽさを感じます。
一方で、個々のモチーフに注目してみると、ピンクがかかった赤の小花が(上記、赤丸参照)冬の凍った空気の中で凛と咲く紅梅、二色使いの葉っぱが(上記、青丸参照)新春の門松をなんとなく連想させ、おめでたい新春にぴったりかな?とも。
錆が入ってキリッと引き締まりました
柄全体を見渡した場合と、個々のモチーフに着目した場合と、ふたつの印象を楽しめる『金唐小花』、正直・・・気に入っています。密かに、誰かプレゼントしてくれないかな~って思っています(笑)。
元となっている『小花』柄は、1972年に描き下ろされた、かれこれ46年間も愛され続けているロングセラー柄です。『金唐小花』は、その 『小花』のレトロな愛らしさはそのままに、華やかさと大人っぽさを加えた柄に仕上がっています。
後列:ぐるっとファスナーの長財布、前列左から:パスカードホルダー、ぐるっとファスナーのお財布
余談ですが、2019年の風水によるラッキーカラーは、 「赤、白、金」だそうですので、白地の文庫革に赤と金を多用した『金唐小花』はまさにラッキーアイテムかもしれません。
デスクの換気扇上に、クリスマス気分を盛り上げるクマとチェブラーシカが登場!
少々早いのですが、皆様にとって今年一年はどんな一年だったでしょうか?
目標や願い事は叶いましたでしょうか 。
この「叶う」という字はよく、「吐く」という字を引き合いにして
「マイナス(不平不満や悪口か?!)なことを口にしなければ、『吐く』という字から「-」(マイナス)がなくなり、願いが『叶う』」と言われますよね。要は、何かを成就させる秘訣は、「+(プラス)」(叶うの「十」の部分)なことを口にするのが肝要・・・ということでしょうか。
ただ、漢字の成り立ちからするとこの話は都合のいい後付の話に過ぎないのでしょうけれど、妙に納得してしまいます。
スカイツリーの中にクリスマスツリーで、まさに「スカイ」「ツリー」 (工房の屋上より望む)
秋から冬へ移り変わるにつれて、新柄の準備に追われていた工房も、ほんの少しですが落ち着きを取り戻して来ました。年末年始の予定の話題も出始めています。
本年も「文庫屋大関」のお財布たちをご愛顧頂きましてありがとうございました。
来年も心をこめて「一筆一心」、皆様に寄り添う文庫革をお届けしたいと思いますので、引き続きどうぞよろしくお願い致します 。